ライブレポ Awesome City Club 「Awesome Talks -One Man Show 2017-」@赤坂ブリッツ

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赤坂ブリッツで魅せた4年間の集大成 そして新たなステージの幕開けへ

2017年5月19日、今夜はAwsome City Clubによる「Awesome Talks -One Man Show 2017- 」のツアーファイナルだ。

 

18時過ぎ。会場内に入る。男女比は半々といったところだろうか。親子連れや学校帰りの学生がいる。開演時間の19時が近づくにつれて、スーツ姿の人も見かけるようになった。オーサムが幅広い層から支持を集めていることを実感する。1200人収容の赤坂ブリッツは、いつの間にか多くのファンで埋め尽くされていた。

 

いつものSE(The Flaming Lipsの『Race For The Prize』)ではなく、会場内のBGMが流れる中、暗闇の中から5人が静かに登場。それぞれが定位置につき、いよいよライブが始まる。暗くて静かなステージからatagi(Vo/Gt)の美声が聴こえてきた。『Movin' on』だ。楽器とコーラスが1つずつ加わり、音が幾重にも重なっていく。オーディエンスが体でビートを刻み始め、ブリッツのボルテージは緩やかに上昇。「東京ー!」とatagiの叫び声を合図に、パーティーの始まりを喜ぶかのような歓声が鳴り響いた。

続いてドロップされたきらびやかなサウンドが魅力の『GOLD』が会場に高揚感をもたらす。マツザカタクミ(B/Syn/Rap)の小刻みなベースラインで、鼓動の高鳴りが一層加速。テンションアゲアゲ、お祭り気分で楽しく手拍子。サビ前でPORIN(Vo/Syn)が「ただいま東京ー!!」と絶叫し、観客はそれにハンズアップで応える。

 

「改めましてAwesome City Clubです!」。

今年1月に発売した「Awesome Ctiy Tracks4」を持ってAwesomeCityTracks(以降ACTとする)シリーズは完結。今回のワンマンツアーは、これまで発売したシリーズ4作品を締めくくる集大成のツアーだ。そして、ここ東京・赤坂ブリッツでファイナルを迎えた。

atagiはお客さんに向けて「(今まで4作品に対する)僕らなりの解釈を楽しんでもらえたらと思います。最後までお付き合いよろしくお願いします!」と語った。

 

MC直後にドロップされたのは『Vampire』だ。この曲のメインボーカルPORINが時にクルっと回転しながら、ステージ上を華麗に舞う。誰もが夢中になってしまう天真爛漫な女の子は、舞台上での振る舞いだけでなく、磨きのかかった歌唱力でもオーディエンスを魅了する。才能の爆発とは恐ろしいものだ。

続く「ACT2」からのナンバー『アウトサイダー』では、リズム隊のうねるビートが僕らのダンス本能を刺激し、リズムに身を任せて体を揺らす。細胞が音楽に共鳴していく感覚を覚える。あーベースラインが堪らなく好き。

ステージ上ではユキエ(Dr)とマツザカが笑顔でアイコンタクトをかわし合い、互いのリズムを合わせる。この光景が何度見ても好きだ。ユキエの打ち鳴らすドラムは強さに加えてハリがある。そして、しっとりした曲で魅せる柔かで温かいビートもまた素晴らしい。このドラマーの進化は留まることを知らない。

ライブでは久しくやっていなかった『愛ゆえに震度深い』も披露された。この曲はクラウドファンディング限定ライブ「Awesome Rare Talks」で久しぶりに披露され、本人たちも「何で今までやってなかったんだろうね」と首をかしげるくらい会場で盛り上がった曲だ。赤坂ブリッツでもマツザカ&PORINが息のあったラップを魅せつけ、場内を沸かせる。ラップやベースプレイで魅せるマツザカのエモーショナルなパフォーマンスに心が熱くなった。

 

最新アルバム「ACT4」の中で、個人的に最も好きなのが『Sunriseまで』という曲だ。ユキエが放つしなやかで跳ねるビートに乗って、atagiのハートフルなヴォイスが縦横無尽に場内を駆け巡る。この日のために髪の分け目を変えたというフロントマンは今日も絶好調。ユキエの描いた世界(ユキエ作詞)へatagiと共にダイビング。魅惑の夜を一緒に飛び回っているみたいな感覚に落ちる。

オーサムの作品がこれだけバラエティに富んでいるのは、5人全員が作詞、作曲を担当しているからこそ生まれるものなのだと思う。

 

ライブ中盤。PORINが「大事な人を想って聴いてください」と述べ、ここからバラードゾーンに突入。

『Lullaby for TOKYO CITY』で緻密で美しいコーラス&アンサンブルで壮大なドラマを描き出し、フロアを圧倒したかと思えば、ACCが誇るアンセム『Lesson』ではアダルトな雰囲気を感じるアレンジで、僕らの体をゆらゆら揺らす。5人の奏でる音楽とお客さんの心がシンクロし、音楽がもたらす幸福感で場内が満たされる。ララバイをライブの中盤でやるという構成には正直驚いた。

それにしても『Lesson』という曲は魔法の楽曲だと思う。アレンジの幅が広く、ライブによって様々な表情が顔を出す。曲がどんどんグレードアップして、成長していく過程が見れるのは本当に楽しいし、今後どんな進化を遂げるのか本当にワクワクする。

 

モリシー(Gt/Syn)の奏でる叙情的なメロディに乗せて、atagiの切なくほろ苦い『Cold & Dry』が歌詞の世界観と相まって心を締め付けてくる。ファルセットが実に美しい。

モリシーの奏でるギター&ピアノサウンドは非常に豊かな表情を見せる。表現力の高さは天下一品だ。

atagiはこの2年間でヴォーカリストとしてもACCのフロントマンとしても目覚ましい進化を遂げたと思う。時に関西弁を挟みながら、フロアを盛り上げるMCはとても頼もしいし、情感あふれる歌唱には誰もが惚れ惚れとしてしまう。滲み出てくる大人のフェロモンがまたエロい。

そして、初めて見た時より良い意味でエゴイスティックになった気がする。「ACCのピースに自分を当てはめるのではなく、自らの個性を前面に出して、ACCを引っ張っていく」。そんな意志を最近強く感じるようになった。MC中の関西弁が増えた点もそれを表す一面なのだろう。ステージ上で包み隠さず内面を解放するatagiは眩しいほどに輝きを放っていた。

「こんな男になりたい」。無理だとわかっていても、ささやかな憧れを抱かずにはいられない。

 

フロントマンの2人が休憩タイムということでステージを一旦去り、舞台上に残ったマツザカタクミ、ユキエ、モリシーの3人による会話が始まった。これがなんとも緩い。まあ緩い。「いつもこんな感じなんですよ」と笑顔を振り撒く3人。ゆるいけど、穏やかですごく暖かい。整理整頓や電子レンジの話、マツザカの赤坂ブリッツにまつわる思い出話などで場内は和やかなムードに。ユキエがずっと抱えていた悩みや想いを聞いて、思わず胸が熱くなった。

これは余談だが、マツザカの横断歩道の話は自分も全く同じことをしていたので、「うんうん」と大きく頷きながら話を聞いていた。

いつも楽しそうに会話をするユキエとマツザカの2人、それを落ち着いた佇まいで聞くモリシーが本当に大好きだ。

 

「じゃあ始めますか」とマツザカ。3人が演奏の準備に入った。マツザカの「On Drums ユキエ!」の声を合図に、ユキエがドラムを鳴らし始める。そこにモリシーのギター、そしてマツザカのベースが加わる。あんなユルッとした世間話をしていた3人が、ひとたび楽器を持てば、多くのファンを魅了するミュージシャンに大変身。なんてカッコいいんだ!これがギャップというものか!!ギャップ萌えというやつかっ!!!

すいません。思わず取り乱してしまいました。

PORINとatagiが再びステージ上へ戻って来た。「話が長いっ!ずっとステージの脇で待ってたわ!」とツッコミを入れるatagi。思わず笑いがこぼれる。信頼し合っている5人だからこそ作り出せる柔らかなムードが凄く心地良いし、そういう所もACCの大きな魅力である。

 

「ACT4」が誇る名曲『青春の胸騒ぎ』からライブ後半戦がスタート。「まだまだパーティはこれから」と言わんばかりに『what you want』、『It's so fine』とエンジン全開で次々と畳みかける。板についてきたコール&レスポンスを要所要所で見せ、5人に引っ張られるように場内は大きな盛り上がりを見せる。

 

ライブは残り3曲。ACCはここからアクセルをフルスロットルで回し、パーティー会場の熱気をさらにヒートアップさせていく。

いきなり『Don't think, Feel』をブチかましてきた。ユキエを除く4人がステージの前ギリギリまで出てきて、オーディエンスと心を通わせながら一緒にダンス。物理的に前へ行けないユキエも、心の中では4人と共にステージ前に出て会場のみんなと踊っているように見えた。ドラムセットの前で向き合ったモリシーとマツザカが互いの演奏を楽しそうに見せつけ合い、atagiはステージを降りて、全てのエネルギーを出し切るが如く感情を爆発させる。

 

続いてオーサムを大きなステージへ押し上げた特別な1曲『今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる』がドロップされると、オーディエンスは「待ってました」と言わんばかりに大きな歓声を響かせ、ブリッツの興奮は最高潮に到達。天井に吊るされたミラーボールが回る中、手を挙げたり、腰を揺らしたり、ステップを刻んだり、赤坂ブリッツにいる皆が自由に心ゆくままにこの時をエンジョイする。5人がもたらす魔法が時を忘れさせてくれる。気分は超最高。イェイイェイイェイ!!!

「皆さん上海は好きですか?」。最後はあの曲だ。『涙の上海ナイト』!「トーナンシャーペイ」の大合唱が響き渡る中、ライブ本編はフィナーレを華々しく飾った。

 

「僕はフロアが主役になる音楽が好きなんです」とatagiが言っていた。みんなに楽しんでもらいたい。フロアを中心に音楽を鳴らしたい。そんな強く確かな想いを体現し、彼らはACCのライブと楽曲が「フロアを主役にするもの」だと見事に証明してみせた。

 

温かな手拍子に応えて再び5人が登場。「新曲やります!」。予想もしていなかったまさかの一言に驚きを隠せない。しかも2日前に出来たばかりだという。曲の名前は『悲劇王(仮)』。人はあたかも自分が悲劇のヒロインやヒーローのように振る舞う時がある。そんな人間の気持ちを書いたのがこの『悲劇王』だ。ベースラインの映えるニューナンバーはこれまでのACCにはないエッセンスの感じるメロディラインで、彼らが新しいステージへ歩き出したことを予感させる1曲だった。また、サビパートで見せたatagiの腰振りもインパクトがあって、今後ライブに欠かせない1曲になる予感がした。

 

「今楽しいです!」と、atagiは素直に自らの想いを語った。そんな今の気持ちを歌った1曲『Action!』が披露された。ACTシリーズの最後を飾る1曲で、彼らはツアーファイナルを締めくくった。「今を最大限楽しみまくる。そして、未来を恐れず前へとことん突き進む。」という彼らの強い決意を感じた。

 

集大成となるツアーファイナルで彼らが提示したのは「ラブ&ピース」に溢れた街だった。喜びも悲しみも含めて、あらゆる角度から恋と愛を歌い、僕らの心に寄り添う。そして、いつどんな時であろうとも、人々を最大限に楽しませることを忘れない。これはライブに限った話ではない。なぜこんなにも彼らとの時間は楽しいのか?

それは本人達が自信を持って、思いっきり楽しんでいるからだと思う。どんなにファンが増えようとも、どんなにステージが大きくなろうとも、自分達が楽しんで音楽をやる事は一貫して変わらない。

 

結成から4年。そして2015年4月に1stアルバム「Awesome Cty Tracks」でメジャーデビューを飾ってから2年。彼らは音楽やライブなどあらゆる活動で人々を楽しませ続けると共に、批判や失敗を恐れず常に新しいことにチャレンジし続けてきた。全力で走り続けた彼らの第1章は2017年5月19日、赤坂ブリッツのツアーファイナルで幕を閉じた。そして、ここから始まる次のステージ。

アンコールのMCでオーサムの主宰であるマツザカから「ベストアルバムの発売 & Awsome Talksの開催」が発表された。8月23日に発売されるベストアルバムには既にリリースされたACTシリーズの作品に加えて、新曲も収録されるという。「Awesome Talks」もベストアルバムの発売と同じく、8月に開催される。ワンマンツアーを終えた後もイベントが目白押しだ。

今後、Awesome City Clubは一体どんな街を描いていくのだろうか。すでに楽しみで仕方ない。彼らの未来を考えただけで、ワクワクが止まらない。自分もそんな未来を描きたいものだ。

ツアーファイナルの翌々日には早速「GREENROOM FESTIVAL '17」でのライブを控えている。5人はシリーズ完結の余韻に浸る間もなく、再び未来へ走り出した。

 

Awesome City Club 「Awesome Talks -One Man Show 2017-」@赤坂ブリッツ セットリスト

1.Movin' on

2.GOLD

3.Girls Don't Cry

4.Vampire

5.アウトサイダー

6.愛ゆえに深度深い

7.Sunriseまで

8.Lullbay for TOKYO CITY

9.Lesson

10.Cold & Dry

11.青春の胸騒ぎ

12.what you want

13.It's so Fine

14.Don't Think, Feel

15.今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる

16.涙の上海ナイト

アンコール

17.悲劇王(仮タイトル)

18.Action!