星野源のドームライブに行ってきました。
音楽の素晴らしさを「自然体」で表現し続けた3時間
源と過ごした東京ドームでの夢のひと時。3時間もの大ボリュームライブだったのに全然そんな感覚がない。「楽しいと時間を忘れてしまう」と言うが、それは本当なのだと思う。
日本の男性ソロアーティストで史上5人目となる5大ドームツアー。今や日本を代表するアーティストになった星野源。「大好きな人が遠くに行っちゃったみたいで悲しい」。これだけ人気になると、普通ならそんな気分になる。だけど源ちゃんは違う。
凄い人なのに、凄い事をやってる人なのに、良い意味で全然そんなオーラを感じさせない。そこにいたのは音楽が大好きで、人懐っこくて、周りを笑顔にしてくれる星野源という少年だった。彼の振る舞いが感染し、自分も少年のように3時間はしゃぎまくった。
2019年2月28日。あいにくの雨。水道橋に到着し、ドームへ向かうと、「POP VIRUS」の旗が道に沿って連なっているのが見えた。
ドーム付近には源ちゃんのツアー看板。あとデカいグッズ売り場。今回のツアーをサポートするドコモの特設コーナーもある。
ドームになると、とにかく規模が凄い。ミスチル以外のドームライブは初めてだったし、改めて規模の大きさをひしひしと感じる。
昔は圧倒的に女性客が多いイメージだったけど、男性も増えていたし、何より目立っていた家族連れ。小さいお子さんがたくさんいて、源さんの音楽は確実に色んな層へ伝染していってるのがよく分かった。
待ちに待ったライブ開演
18時半。いよいよライブ開演。
ステージ前方に張り出す花道の中央に真っ赤なパーカー姿の源さんが登場(最近は「源さん=パーカー」のイメージしかない笑)。
意外にも弾き語りからライブはスタート。演奏したのは『歌を歌うときは』。
8年半前、ソロでの初ワンマンライブ(渋谷クアトロ)をやるために制作した1曲だ。キャパわずか800人のライブハウスから始まったソロでのライブ人生。あの時のために作った曲を5万人の大観衆の前で歌う源さん。今、東京ドームのステージで何を感じているのだろうか。
続いてツアータイトル、そして最新アルバムもタイトルでもある『Pop Virus』が披露される。ギターの弾き語りから静かに始まり、打ち込みのビートと「ザーッ」というシンセ音に呼応するように白い光が激しく放たれ、サビ終わりに一気にバンドサウンドが花開く。それと同時に自分と5万人のボルテージが爆発。
ドーム級の会場でしか味わえない圧倒的な光景はいつ見ても壮観だし、ホント鳥肌もの。せんたー的「日本の名景100」の1つに認定させて頂きます。
興奮冷めやらぬ中、『地獄でなぜ悪い』の演奏が始まった。
ふとあのシーンが脳裏を流れる。YouTube用に制作された『地獄でなぜ悪い』のトレーラー映像。病室のベッドでピースをする源さん。2度も死の淵に立たされた人が、今5万人もの大歓声の中、ステージで輝きを放っている。色んな感情がこみ上げてきて、思わずグッと来てしまう。
あの地獄へ突き落された時、『Get a Feel』の歌詞のように源さんの近くには音楽の神様(母方のおばあちゃん?)みたいな人が降りてきて、その神様が「あなたはこれから多くの人を勇気づける事になるのだから、長く生きなさい」と物凄いパワーを送って源さんに生きるエネルギーを与えたのだと勝手に思ってる(MUSICAのインタビューでは「母方のおばあちゃんがそばで見守ってくれてる」と語っている)。神様(母方のあばあちゃん)ホントにありがとう。
今ではお馴染みの亮ちゃんことギターの長岡亮介との軽快なギターカッティングセッションで始まる『桜の森』は、聴いていてホントに気持ち良いし、体が勝手にステップを踏んでしまう。一度立ち止まった時にドーム全体が揺れているのが分かった。ドームがうねってる。源さんすげえよ。
『Get a Feel』『pair dancer』『サピエンス』など、序盤から最新アルバム『POP VIRUS』の楽曲を次々に歌ってくれて、初めて生で聴く曲ばかりだったし、もうすでに大満足。幸せ溢れすぎて逆に怖い。
新曲の中で特に良かったのは『Present』。重苦しいサウンドから始まるこの楽曲。生で聴くと音源以上にピアノとストリングスがズシッと心の奥底に響いてくる。終盤、重苦しさから一気に雲が晴れて明るいサウンドへ転換し、音に導かれて太陽のように眩しい光が会場を照らし出す。山頂で綺麗な朝日を見ているような素晴らしく美しい光景だった。
途中音が飛ぶハプニング(音響のトラブル?)があったものの、それを感じさせないほど充実した序盤戦だった。
そしてやってきたお馴染み幕間VTRのコーナー。過去にはウッチャンやバカリズムなど大好きな芸人さんがたくさん出て来たこともあって、ライブ同様に楽しみにしてたこの時間。
期待通り、いや期待以上に出てくる人みんな面白くて、笑いが止まらない。特にお馴染み公式お兄ちゃんたちのシーンは会場が爆笑の嵐だった。
ドームに漂う優しくて温かな幸福感
VTRが終わり真っ暗の中、どよめきが起こる。源さんがバックネット裏の観客席にいるではないか!!観客席からの弾き語り披露なんて全然予想してなかった。ホント源さんにはいつもビックリさせられちゃう。
「消防法の関係でここしかダメだったんです」と源さん。東京ドームの観客席から歌うアーティストが過去にいたのだろうか?「出来れば隣で歌ってほしかった」とちょっぴり悲しい気持ちになったのは私だけでないはず。
歌ってくれたのは『ばらばら』。選曲良すぎ(泣)。
アコースティックギターの素朴な音色が静かなドームに響き渡る。「キュッキュッ」とアコギを弾く時に出る独特の音がまた気持ち良い。昔からずっとあの音が好きだ。ステージが小さいし、ギター1本の弾き語りだから、まるでライブハウスで見ているかのように心理的な近さを感じる。『ばらばら』という楽曲がより心の近さを際立たせる。
「星野源はどんなステージにいても僕らと同じ世界を生きていて、この先もずっと心の側で寄り添ってくれてるのだ」と分かった気がして、なんだか心が癒された。
気づくとステージ花道の先にある円形ステージにバンドセットが出来上がっていた。源さんがステージへと移動するまでの間、STUTSによるMPCプレイが始まった。
STUTSのプレイはこのライブのハイライトの1つになるほどの傑出したパフォーマンスであり、源さんの曲(たぶん『Pop virus』『ミスユー』『Continues』など)をヒップホップスタイルにリミックスした楽曲(STUTS作)がめちゃくちゃクールで、ダンスフロアと化した会場で皆がSTUTSの音楽に酔いしれていた。
STUTSのプレイに合わせて、ノリノリな感じでステージへと集まってくるバックバンドのメンバーと源さん。そして、なんとなく始まったトークコーナー。
幕間VTRの間、ステージからバックネット裏の観客席まで車で移動したという源さん。そこへドラム担当のカースケさん(河村智康)が一言。「えっ飯田橋から(回ってきたの)?」。まさかのボケに会場は大爆笑。
その後もカースケさんは永遠と話してるし(前日のライブでプロ野球の鳴り物禁止時間を間違えて伝えてしまったことなど)、石橋英子が『JUMP(バックトゥザフューチャーの曲)』を弾いたかと思えば、櫻田泰啓が『渡る世間は鬼ばかり』を弾き出し、源さんがステージ上で笑い転げて、そのまましばらく仰向けになるなど、皆好き勝手にやりたい放題(権利上の問題でこのシーンはカットされるだろう)。ここでもドームは爆笑の嵐。カースケさんがこんなに面白い人だったとは知らなかった!
『プリン』の曲中に挟まれたトークでも皆やりたい放題だったけど、むしろそのスタジオライブのようなユルい雰囲気がとても心地良くて、ドーム全体が幸福感で包まれていた。「こんなこと出来るの俺らしかいない」って源さん言ってたけど、だからこそ源さんのライブに行く価値があるんだと思う。
あと全然関係ないけど、円形ステージでみんなが向き合って演奏する感じがなんだかSAKEROCKの解散ライブで見た光景と見えたなぁー。
源さんからの心強いエール
あっという間にライブは終盤戦へ。
『化物』から始まって『恋』『SUN』『WeekEnd』とダンサンブルな名曲たちがイレブンプレイによる華やかなステージパフォーマンスと共に次々に繰り出される。
同じフリを一緒に踊ったかと思えば、今度は皆バラバラで自由に踊ったり。「一体感の楽しさ」と「自由に踊る開放感」を同時に味わえるのが源さんライブの醍醐味だ。ここに来る度にいつも思う。
「どっちが良いとか悪いではなく、どっちも最高なのだ」。
終盤で最も印象的だったのは『アイデア』。「嬉しいこと」も「クソみたいこと」も全て含めて星野源の今を歌った渾身の1曲だ。
陽の部分も陰の部分も飾りもせずに自分の全てをさらけ出した作品をステージ上で全力で表現する星野源。言葉だけでなく音だけでなく、源さんの全てが物凄いパワーでこっちに向かって来て心にグッと突き刺してくる。
「闇の中から歌が聞こえた あなたの胸から 刻む鼓動は一つの歌だ 胸に手を置けば そこで鳴ってる」
暗闇の中で聞こえる源さんの弾き語り。気づけばいつも闇の中で励ましてくれたあなたの声。
ラストのサビを歌う前にセグウェイでメインステージに戻って、みんなを笑わせるあなたも大好きです。
銀テープと同時に放たれたラストのサビ。今まで見たことないくらいにキラキラしている目の前の景色。「良いこともあるだろうし、嫌なこともあるだろうけど、せっかく1度きりの人生なんだから全力で噛みしめて一緒に今を生きてこう」と源さんから心強いエールをもらった気がした。
そしてアンコール
本編が終了し、時計を見ると2時間半近くが経過していた。
うそやん。10分くらいしか経過してないでしょ。
それくらい充実した2時間半で、「残りのアンコールも思う存分楽しもう」と再度気合を入れる。
そしてアンコールの時間。毎度おなじみのニセ明が登場する。今宵のニセもキレッキレだ。ライブ最大の驚きはこの直後にやってきた。
ニセのステージになんと星野源本人が現れたのだ!まさかの初共演。
夢かと思った。もしくはAR的なテクノロジー使ってるのだと。状況飲み込めなさ過ぎて、たぶん1分くらい放心状態が続いていたと思う。後からリアルなニセのニセ明(ダンサーShingo Okamoto)だったことが分かるのだけど、言われるまでホントに気づかなかった。
『時を』でのニセ&星野による豪華なダンスコラボレーションも終わり、3時間にわたるドームライブにいよいよ最後の時間がやって来た。終わりはいつだって悲しい。終わりがあるなら始まらなければ良いと思うくらいに。
でもそんな悲しみは『Hello Song』のパフォーマンスで全部吹き飛んでいった。そして、ちょっとだけど明るく見えたこの先の未来。未来って悪くないかもな。
豪快なテープキャノンが舞う華々しいフィナーレで東京ドームでの夢のような一夜は幕を閉じた。
星野源が教えてくれた生きる上で大切なこと
3時間という時間が長いと全く感じさせないほどの濃密なライブ。
それもそのはずで圧巻のステージパフォーマンスはもちろんのこと、爆笑の幕間VTRに、観客席での弾き語り、セグウェイタイム、ちゃぶ台でのトランプ、そしてやりたい放題のトークコーナーなど、笑いあり涙ありで「もうこれ以上は食べきれない」というほど見どころが満載だったし、皆でダンスや歌を歌うシーンなど、お客さんが参加できる場面もたくさんあった。
ちょっとした時間でさえ飽きさせない工夫が至る所に施されていて、チーム星野源のエンターテイメント性の高さを強烈に感じた。ディズニーやUSJのような人気遊園地で遊んでいるのと変わらない感覚。飽きないし、ずっと楽しい。家族連れが多いのも頷ける。
喜怒哀楽の感情を持った人間のあらゆる感性を刺激し、老若男女みんなで楽しめる場所。それが星野源のライブなんだと思う。
このツアーを通して、もう一つ強く感じたことがある。
それは「星野源も私たちと何らステージの変わらない日常を生きている」ということだ。
星野源は日本を代表する人気アーティストで、今や5万人もの前でライブをするスターである。会場の規模は凄いし、大河ドラマや紅白にだって出ているし、それだけ聞くと一見別世界に生きているように思うだろう。
でもそうじゃない。
源さんはパフォーマンスする場がドームであれ、スタジオであれ、スターになった今も何も変わっていなかった。大好きな音楽を自由に奏でて、大好きな仲間達とたわいもない話で盛り上がる。その姿は至って自然体で、どこにでもいるような普通の人間だ。ドームでの彼の振る舞いは多分いつもの日常と全然変わらないもので、好きなものを全力で楽しみまくっていたのがとても印象的だった。
ライブで見るとより強く感じるが、源さんは5大ドームツアーをやってしまうほどのスターなのに遠い存在に全く見えなくて、むしろ物凄く親近感がある。彼のそういう所が多くの人に愛され、多くの人を勇気づけている理由なのだろう。もちろん自分もその1人だ。
最近は個人的に世間の色んな出来事やSNSの情報に気持ちをかき回されて、悩んだり、暗い気持ちになったりすることが多かったけど、これじゃダメだと源さんのライブを見て強く思った。
気心知れた仲間と話したり、大好きな音楽を聴いたり、大好きなものを食べたり、そんな何でもないような時間をもっと大切にして生きていこう。
今夜、人生でとても大事なことを源さんから学んだ。源さんに感染しました。
星野源ドームツアー2019「POP VIRUS」@東京ドーム2日目セットリスト
1.歌を歌うときは
2.Pop Virus
3.地獄でなぜ悪い
4.Get a Feel
5.桜の森
6.肌
7.Pair Dancer
8.Present
9.サピエンス
10.ドラえもん
11.ばらばら
12.KIDS
13.プリン
14.くせのうた
15.化物
16.恋
17.SUN
18.アイデア
19.Week End
20.Family Song
アンコール
21.君は薔薇より美しい
22.時よ
23.Hello Song