ライブレポ 「Awesome Talks -vol.6-」 @Shibuya O-EAST

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早いことで6回目となったAwesome City Clubによる自主企画「Awesome Talks」が、11月25日渋谷のO-EASTで開催された。この企画は毎回魅力的なゲストが登場するイベントだ。今回ゲストとして登場するのは、メンバー同士昔から親交のあるというnever young beach。またこの日は写真撮影、動画撮影OKという国内では珍しい条件の上で開催されるイベントということもあって、どんなドラマが待ち受けるのか楽しみに渋谷へ向かった。

ステージ上に浮かぶUFO!?

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会場に入っていきなりビックリ。場内には様々な演出が仕掛けられていた。グッズ売り場には上の写真のように、記念写真が取れるスポットがあったり、「Awesome Talks」ロゴマークが壁に映しされていた。ステージのフロアに入るとこれまたビックリ。ポテトやUFO、ナメクジにヤシの木など、色んな物体で舞台上が埋め尽くされていた。テーマは「ネバヤンシティクラブ」といった所だろうか。ワクワクする仕掛けに、来場したお客さんは夢中になって写真を収めていた。

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ライブ以外で施される演出もこの企画の注目すべき点である。今年3月に行われた自主企画では、持ち帰り自由のロゴシールが会場のいたるところに貼られていたり、彼らと親交のあるアーティストや音楽関係者によるフリーマーケットも開催された。

いつ訪れてもワクワクさせられる場所。こんな所にも「Awesome Talks」の魅力は隠されている。

ネバヤンのライブが楽しい理由

never young beachはすでに完成されたバンドだ。彼らのステージを観て確信した。音楽で盛り上げ、MCでも盛り上げる。ネバヤンのライブを観たら、ライブが楽しくてしょうがなくなる。生での演奏を見るのは初めてだったが、あっという間に彼らの虜になってしまった。

ライブ序盤から『Pink Jungle House』や『ちょっと待ってよ』を披露。ゆるやかなテンポで流れる雄大で穏やかなグッドメロディ。ステージに植えてあるヤシの木とポテトが色鮮やかに映えていて、気分はまるで南国リゾートでハンモックに揺られているようだ。

松島皓(Gt)と阿南智史(Gt)の背後にあるヤシの木やUFO、ナメクジなど、ステージにある物体を話題にしてオーディエンスの爆笑を誘う安部勇磨(Vo/Gt)。

 

中盤からは『Motel』、『自転車にのって(高田渡のカバー曲)』や『あまり行かない喫茶店で』といったナンバーをドロップ。軽やかな姿で緻密かつ良質なアンサンブルを繰り出し、オーディエンスを酔わせる。なんというグルーヴ感だ。無意識に体が動いちゃう。しかもめっちゃ気持ちよい。ネバヤン操られているように、リズムに乗せて観客は思い思いに体をスウィングさせる。

リズム隊が刻むスウィートなビートがフロアを幸福感でいっぱいにしていく。ネバヤンは音楽界の魔法使いだ。

 

MCでは「Awesome Talksは老舗だよね」との話から、「ネバヤンを菓子屋に例えるなら和菓子屋かジェラート屋のどっちだ?」論争が起こる。メンバーの意見は真っ二つに分かれる結果に。「皆さんも考えといてください」と観客へ投げかける安部。観ていて自然と笑顔がこぼれる。

安部と松島は、ACCのマツザカタクミ、atagiと古くからの知り合いである。「atagiさんはすごく優しいけど、マツザカさんがいつも怖い」と安部は冗談ぽく漏らしていて、会場は大きな笑いが起きる。話を聞いていれば、普段からいかに仲が良いかわかる微笑ましい光景だ。

「実はネバヤンにも冬の曲があるんです」と言葉を残し、最後にこの時期にぴったりの『未来の話をしよう』と『お別れの歌』を披露。ネバヤンはステージを後にした。

 

平凡な表現になってしまうが、彼らのライブパフォーマンスは本当に素晴らしかった。松島と阿南のギターコンビや鈴木健人(Dr)と巽啓伍(B)のリズム隊による熱量の高いセッション、そして時には5人でエモーショナルなバンドアンサンブルを披露し、要所要所で会場のボルテージを引き上げていく。そしてMCでは爆笑をかっさらい、フロアを和やかな空気に。別に笑いを狙ってるわけじゃないのに面白い。あの空気感が堪らない。ネバヤンは私が見てきた中で、レキシの次にMCが楽しいアーティストだった。

これで満足できなかったお客さんはどこで満足できるのか。そんな気持ちにさせられるnever young beachの充実したライブだった。まだ1度も見たことのない方はぜひライブへ足を運んで行ってほしい。

今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる

「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」。自信を持ってそう言われてる気がした。驚くべきハイクオリティなパフォーマンス。彼らには人々を魅了する独特の力がある。そんなことを思い知らされた渋谷でのイヤーエンドパーティーを振り返ろう。

 

登場曲The Flaming Lipsの『Race For The Prize』が流れ出すと、こちらから見てステージ右後方で黄色い物体が膨らみ始める。しかもかなりデカい。もくもくと天高く膨らんで見えた大きな大きな観音様。いきなりの演出に、観客から驚嘆とも呼べるような歓声が沸き上がる。

あっけにとられているうちに、満を持して登場したAwesomecityclub。こちらは「待ってました!」と言わんばかりに、温かな歓声が場内に鳴り響く。

ACCが送る華やかなパーティーは、メジャー1stアルバムのトップナンバー『Children』から開始のホイッスルが鳴った。卓越した演奏と高いテンションで圧倒する5人に引き連れられ、フロアのボルテージもすぐにスイッチが入る。心躍るメロディに合わせて、私は手を挙げて彼らの演奏に応える。気付けばあっという間に自分たちのカラーへ染めてしまうACC。

このままの勢いでドロップされたのは『4月のマーチ』だ。PORIN(Vo/Syn)がいつものように赤いコードで繋がれたマイクを持って、華麗に舞い踊る。モリシー(Gt/Syn)のギターソロを上手く盛り立てるなど、観客のテンションを上げるテクニックは見事なもの。

 

そういえば、2016年はリオで夏季オリンピックが行われた年だ。日本は水泳や柔道、体操団体など計12個の金メダルを獲得した。あの日の感動を振り返るように『GOLD』がまさしく金色の輝きを放ち、イヤーエンドパーティーをより煌びやかにしていく。

 

「東京帰ってきましたー!!」と、ACCを支えるリーダーのマツザカタクミ(B/Syn/Rap)が東京への帰還をここに高らかに宣言。「おかえり」の気持ちがこもった大きく温かな拍手が会場中に鳴り響く。「皆さんついてこれますかー!!?」とオーディエンスの心をさらに湧き上がらせるマツザカ。こういったMCはお手の物だ。

体がしびれるような寒さとなったこの日に、atagi(Vo/Gt)から「心が温まるようなナンバーを」との想いで、『Around The World』が披露される。

マツザカの心地よい巧みなベースラインに乗せて、柔かで優しい美声をatagiが解き放つ。とろけるような色っぽいそのメロディにフロアは酔いしれる。

 

ステージ上の照明は暗くなり、モリシーのピアノとPORINの歌だけで始まった『Vampire』。ピアノサウンドに乗せて、磨きのかかったPORINの歌が渋谷のファンを魅了する。2人が奏でる旋律に思わずウットリしてしまい、私の体は彼らの醸し出す世界観にどんどん吸い込まれていった。4人のアンサンブルが光る序盤以降も、PORINはステージど真ん中で妖艶なパフォーマンスを見せつけ、会場の注目を一身に集める。

凄まじいビルドアップを遂げた彼女の歌唱力には驚かされた。その姿はまるで子供から大人へと脱皮した蝶のよう。多くの人を虜にしてしまう蝶は『エンドロール』でも輝きを放つ。

うす暗くなったステージでモリシーが華麗なギターメロディを鳴らす。モリシーとマツザカの放つオーラはとにかく半端なかった。カッコよすぎて身震いしたほど。オーサムのサウンドを支える重要な2人は、サウンドだけでなく自ら放つ雰囲気もキラキラと光らせていた。そんなモリシーのギターに合わせて、PORINの情感こもった言葉のない旋律が天空を突き抜ける。ライトに照らされシルエットが浮かんでくる二人の姿。浮かび上がったそのシルエットから圧倒的な存在感が放出される。

モリシーだけでなく、atagi、マツザカ、ユキエの4人が奏でるメロディアスな演奏に身を任せて、舞台を飛び回るように歌い上げるACCの蝶。PORINの後ろで演奏する4人の姿を見てれば、彼らがいかにPORINのリード曲が好きかよくわかる。

 

このライブを語る上においては、大きな進化を遂げた彼らのバンドアレンジも特筆しておかねばならない。ACCはライブで様々なアレンジを施す。原曲とはまた違った魅力を1つ1つの曲に引き出すのが彼らのライブスタイルだ。この日見せたパフォーマンスはアレンジされた楽曲の完成度が一段と上がっていて、バンドとして現状に満足せずストイックに進化を求める彼らの揺るぎない姿勢が垣間見えた。音源とはまた顔の異なる作品に出会えた気がして、ワクワクした気持ちが体を駆け巡った。

 

5人の演奏で最も印象に残ったのがAwesomeCityClubを代表する1曲『Lesson』だ。今年のライブでは何度か披露している、atagiのソロパートから始まるアレンジバージョンが今夜のショーでも披露された。体をうねらせながら演奏するマツザカの流れるようなベースラインと、ドラマティックに展開していく緩急の付けたユキエのドラミング。力強いユキエのドラムが私は大好きだ。この日はそれに加えて展開力を持たせるドラミングが輝きを放っていた。特に『Lesson』や『Around The World』など、ゆったりと流れるナンバーが特段に良かった。強弱と緩急を付けて、曲に物語性を持たせる。そして、ハイライトへしっかりとピークを持ってくる感情豊かなドラミングで楽曲の仕上がりに磨きをかける。ユキエのドラムが1つ1つの作品を味わい深いドラマへ仕立て上げていく。

リズム隊の生み出す情感あふれるビートに合わせて、atagiのスウィートな歌声とモリシー&PORINによる絶妙なコーラスがお客さんの心をつかんで離さない。オレンジの照明に照らされながら奏でる極上のバンドアンサンブルに導かれて、オーディエンスは心と体を思いゆくままに揺らす。

 

MCでは今夜ゲストとして登場したneveryoungbeachとの交遊録がマツザカとatagiの口から語られた。ネバヤンの安部とは普段行く下北沢の古着屋さんが一緒だというマツザカ。「自分の名前を出せば安くしてもらえる」と安部に言われたのにもかかわらず、買い物をしたら全く安くしてもらえなかったというエピソードを披露。この話には会場が大きな笑いに包まれる。

別のバンドだった頃から安部を知っているatagiは、「再びこんな大きな場所で一緒にやれたことを嬉しく思う」と感慨深そうに話していた。2組のバンドが一緒にライブを行うことの喜びはファンだけが感じているものではない。アーティスト自身も同じくらい、いやそれ以上に感じていたのかもしれない。

 

圧巻のパフォーマンスを見せつけたフロントマンはPORINだけではない。atagiもそうだ。最近の彼は他を寄せ付けないオーラを醸し出している。ACCのヴォーカリストとして揺るぎない地位を確立しつつあるのではないだろうか。渋谷で行われたパーティーでも彼は卓越したパフォーマンスを披露した。『Around The World』や『Lesson』もそうだし、他にも『what you want』といったナンバーで、自らが唯一無二のヴォーカリストであることをここに証明していく。

「ここからラストスパート。東京ついてこれますかー!!?」と煽るatagiに、声を上げて応える観客。その声のボリュームに納得しないatagiがもう1度「まだまだいけますかーー!!?」と再び問いかける。その声に負け字劣らずの大歓声がフロア中に鳴り響く中、『Don't Think, Feel』がドロップされる。ハンドマイクを持ちながら、atagiはマイケルジャクソンばりの華麗なステップを披露。ステージを縦横無尽に使ってリズミカルに踊るその姿に観客は魅了され、渋谷O-EASTのボルテージが一気にヒートアップ。

その流れのまま始まった『アウトサイダー』では、観客が手を左右に揺らして、高ぶった感情をありのままに爆発させる。

曲の途中、「みんな今年もホントどうもありがとう!2017年もその次もずっとずっとAwesome City Clubをよろしくお願いします!」と過去と未来へ想いを込めてファンへ挨拶するPORIN。

 

アウトサイダー』の余韻冷めやらぬ中、「お待たせしましたー!」との声に続いて待ちに待った新曲を披露された。タイトルは『今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる』。表現者として大きくビルドアップを果たした2人のヴォーカリストが魅せる、究極のデュエットラブソングだ。カラオケみたく左右のビジョンに歌詞が映し出される。夜に繰り広げられるドキドキな恋愛模様を、アップテンポなメロディに乗せて2人の男女が互いに歌を交し合う。「渋谷ー!!」とPORINが力強く叫ぶ。ステージ左右の端にそれぞれ立ち、互いに向き合って想いを乗せるatagiとPORIN。この曲の歌詞に合わせるがごとく、ステージ上に照らされた大きなミラーボールが活き活きと回り、二人の間を照らし出す。きらびやかなパフォーマンスに、オーディエンスは心を浮かせて身体を上下左右に揺らしまくる。

鈴木雅之と菊地桃子の名曲『渋谷で5時』を彷彿させる2016年の名曲がここに誕生した。

 

アンコールに応えて再び5人が姿を現す。ここで大きな発表がなされた。「ニューアルバム発売&全国ツアー開催決定」の知らせだ。これにはO-EASTに訪れたファンも大喜び。「おおっー!」と驚きと喜びに満ちた拍手が会場を埋め尽くす。来年のツアーは前回以上に開催都市を拡大。ファイナルは東京の赤坂ブリッツで行われると発表された。いよいよ赤坂ブリッツまで来た。さらに大きなステージでのワンマンを喜ぶと同時に、これから始まる快進撃の予感に胸が躍る。

 

ACCにとってはとても思い入れのある曲、『涙の上海ナイト』が今夜の締めくくりとしてチョイスされた。素晴らしいライブを披露してくれた感謝の想いを込めて、私は2016年最後の「トン・ナン・シャー・ペー」をステージに向かって叫んだ。叫び倒した。会場のボルテージが冷めやらぬ中、ACCによる2016年最後のパーティーが終了した。

 

「ビクターロック祭り」から始まった2016年のAwesomeCityClub。3月には「Awesome Tlaks -vol.3、4」の開催。6月には3rdアルバムのリリース、そして夏には全国4か所の及んだワンマンツアーが行われた。

www.centerofongaku.com

 

多くのフェスにNHK音楽番組への出演など、2016年の音楽シーンを大いに賑わせ、まさにフル回転の活躍だった。この1年でグループとしての地位は大きなジャンプアップを果たした。

今年もACCから驚きと感動、そして勇気をたくさんもらった。音楽の素晴らしさも教えてもらった。私自身、感謝の気持ちでいっぱいだ。

ニューアルバムの発売と全国ツアーも決まった2017年。来年、AwesomeCityClubは一体どんな姿を見せてくれるのだろうか。今から楽しみで仕方がない。彼らの快進撃はまだまだ留まることを知らない。

 

Awesome Talks -vol.6-@Shibuya O-EAST AwesomeCityClub セットリスト

1.Children

2.4月のマーチ

3.GOLD

4.Around The World

5.Vampire

6.what you want

7.Lesson

8.エンドロール

9.アウトサイダー

10.Don't Think, Feel

11.今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる

アンコール

12.涙の上海ナイト