Awesome City Club 「Awesome Talks -One Man Show- 」@代官山UNIT

なんとなくお蔵入りにしてたライブレポート。せっかく書いたし公開することにしました。めっちゃ今更だけど。

公開するのは、2015年11月28日(土)に行われたACCのワンマンライブのレポートです。

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最高にクールなバンドが包み隠さず魅せたあるがままの姿

福岡から始まった「Awesome Talks -One Man Show-」は、この日行われた代官山UNITでのライブにてファイナルを迎えた。

あるがままの自分たちを表現したAwesome CIty Clubは抜群に格好良く、眩しく輝いていた。

ACCのライブを見るのは今回で5回目。初めて見たのは2015年の4月。それからわずか7か月であるが、彼らの表現力はその短い期間から考えられないほどの進化を遂げていて、バンドとしての強度がかなり増していた。

白い衣装を身に纏ったACCがステージへと登場。ライブは幕開けに相応しい1曲『GOLD』からスタートした。『Children』『It's So Fine』『what you want』と、心も体も躍るポップサウンドを鳴らし、会場の雰囲気を徐々に自分たちの色へと染めていく。

 

普段ライブではあまりやらない曲も披露された。そのうちの1つが『愛ゆえに深度深い』だ。マツザカタクミとPORINのラップを初めて観た方は、あの流れるコンビネーションから繰り出されるフロウに一発で酔いしれたことだろう。ホントマジかっこいいよな。

スーパーピアニストことモリシーと、スーパーフロントマンことatagiのコンビが力を発揮する『僕らはここでお別れさ』では、織りなす淡く切ないメロディが僕の心を締め付ける。

 

ここからはアコースティック形式のライブというスペシャルな演奏が始まった。ステージセット転換の間に、マツザカからACC結成当初の話が語られた。

当時「ファミリア」という音楽スタジオで、共に働いていたatagiとマツザカ。マツザカがatagiに「バンドを結成しよう」と誘うが、atagiはなかなか返事をしなかったらしい。しかし、12月28日下北の鳥貴族にて、ついにatagiがOKを出し、ACCがついに結成される。

マツザカに誘われた当初、atagiはあまりやる気がなかったらしい。正直やる気になってくれて心の底から良かったと思う。

 

そんな知られざる結成秘話から始まったアコースティックライブは、演奏レベルの高さを感じる素晴らしいパフォーマンスだった。ユキエのカホンが緩やかにリズムを刻み、4人が優しくも暖かなメロディを生み出す。人肌を感じるようなその旋律は、今のACCがそのまま滲み出ていた。繊細なサウンドだからこそ、こういう表現ができる。そこがACCの持つストロングポイントなのだ。

 

3人のメンバーがステージを去り、PORINとモリシーによるカバー曲が披露された。元々歌謡曲が大好きだというPORINが選んだのは、太田裕美の『木綿のハンカチーフ』。観客からの手拍子とモリシーの繊細なギターサウンドに乗せて、PORINの自由で伸びやかな声が響き渡る。PORINの表現の幅は以前より凄く広がったと思う。

木綿のハンカチーフ』が披露される前にモリシーが歌った、堺正章の『さらば恋人』が最高に良かったことも忘れずに付け加えておきたい。

 

2人が去り暗闇がステージを包む中、ユキエのドラムソロが始まる。残りの4人もステージへ戻り、ここでスペシャルゲストであるプロデューサーmabanuaが登場。オーディエンスから一段と大きな歓声が上がる。mabanua(フロアタム、キーボード、ボーカル参加)を加えたチーム「Awesome City Club」が、野性的かつ情熱的なサウンドでフロアを熱狂の渦へと誘っていく。場内が完全に仕上がった状態で始まったのは『Jungle』だ。ストロングなビートと生命に満ち溢れたサウンドが、内面に忍ぶ野性的感覚を爆発させ、オーディエンスが自由に感情を表現し始める。この空気が堪らなく好きだ。

この波を更に大きくするように、『Pray』『WAHAHA』とエッジの効いたナンバーが立て続けに投下される。特に『Pray』はヤバかった。食われてしまうのではないかと錯覚するぐらいグルーヴが凄くて、ただただメロディに乗せて、無心で体を揺らしまくった。ホントにみんな想い想いのダンスで自由に踊っていて、おそらく星野源はこういう光景が見たいのだろうと、ふと思う。

 

勢いは止まらない。ここから『4月のマーチ』『アウトサイダー』と2発の代表曲を放ち、フロアの熱狂は最高点へ到達。

興奮冷めやらぬ中、ライブ本編の最後に『涙の上海ナイト』がドロップされた。ステージ上に飾られている中国風のちょうちんに明かりが付き、曲はスタート。ノリノリのビートが最後まで僕らを眠らせない。atagiがコール&レスポンスを観客にお願いする。「トーナンシャーペイ」の応酬が繰り返されるたびに、その声は大きくなっていき、我を忘れて思いのまま声を張る。このライブへの感謝をお互いに叫んでいるようにも見え、愛情あふれる光景だった。

 

アンコールではACCが誇る大名曲『Lullaby For Tokyo City』が演奏された。この曲を生で聴くのは3回目だが、この日が最も素晴らしかった。特に長いアウトロで繰り出される激情的なバンドアンサンブルは圧巻の一言。5人がいわゆるゾーンに入っていて、完全に1つの物になっている。言葉にできないほど圧倒的なスケールでフロアを支配し、オーディエンスはただただ立ち尽くして、無心で彼らの演奏を観るしかなかった。

演奏が終わると、会場に長い静寂が包まれる。圧倒されて、みんな拍手も忘れてしまう。あの静寂は9月のリリースイベントの時よりも、もっと長かった。この曲の威力が、格段に増したことの証明であった。

 

ボーカルのatagiが何度も「楽しい!」と叫んでいたことからもわかるように、会場の雰囲気も含めて本当に充実した素晴らしいライブだった。

マツザカタクミとユキエを中心に生み出されるグルーヴと、重厚なバンドアンサンブルは一段とスケールアップしていたし、それぞれの表現力にも磨きがかかっていた。特に素晴らしかったのは、ユキエのドラミングだ。リズムや緩急の付け方がとても細かくなっていて、曲の深みがより一層増していた。

 

このライブで何より強く感じたのが、彼らの「人間味」である。一番初めに見た時はものすごく格好良くて、「クールなオシャレバンド」という印象だった(実際に話すと人間味溢れていて、とても話しやすい人達です)。MCもどこかクールな感じだったと思う。

 

本人たちも「昔はカッコつけてた」と言っていたけど、その時から比べると本当にあるがままを表現するようになったと思う。「UNIT!」「ありがとう!」「楽しい!」と無邪気に叫ぶ感じとかは、まさにそう。ACCの人達もいつも格好良いわけじゃないだろうし、いつもポジティブなわけでもない。時には泣いたり、時には怒ったりするのだ。そういう人間味溢れる部分がライブでも表れていて、とても格好良かった。少しおぼつかないMCも人間臭くて、なんだか近い存在に思えた。そういうものをさらけ出してくれるからこそ、こちらも格好つけずに済むし、それが良い空間作りに繋がっていく。

人間の感情を音楽で表現するには細かなサウンドと表現力が必要だ。ACCにはそれを作り出す力がある。感情を細部まで表現できるアーティストは数少ない。だからこそ彼らは本当に貴重な存在なのだ。

 

ACCが作りだした「架空の街」はとても人間味あふれる街だった。そんな街の住民になれたことを幸せに思う。しかし、まだまだこの街は未完成である。これからもっともっとワクワクする街に仕上がっていくことだろう。2016年3月には、渋谷クラブクアトロで新たなイベントが開催される。2016年以降も更に我々が驚く、ものすごいものを見せてくれるだろうと期待せずにはいられない。

「Awesome Talks  -One Man Show-」@代官山UNIT 2015年11月28日 セットリスト

1.GOLD

2.Children

3.It's So Fine

4.what you want

5.愛ゆえに深度深い

6.僕らはここでお別れさ

7.P

8.Lesson

9.木綿のハンカチーフ(カバー)

10.Jungle

11.Pray

12.WAHAHA

13.4月のマーチ

14.アウトサイダー

15.涙の上海ナイト

アンコール

16.Lullaby For TOKYO CITY