Awesome City Club 「Awesome Talks -One Man Show 2016- 」@恵比寿リキッドルーム

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リキッドルームを後にし、ライブの余韻に浸りながら自宅最寄り駅へと戻る。家へ帰る前に借りていたDVD(「トイレのピエタ」と「バクマン。」)を返しに、TSUTAYAへ向かった。その最中、ある気持ちが急に込み上げてくる。

悔しい。

悔しすぎて腹が立つ。もちろんACCにではない。自分にだ。

先週行われたShiggy Jr.対バンライブの時も思ったのだが、物凄いスピードで進化する人間というのはこうも輝いて見えるものなのか。俺はこの1年間、一体どれだけ成長したのだろう?自分の成長速度の遅さにとても落ち込んだ。

というかそんなことはどうだっていいわ!ライブの話をしましょう。

夏の始まりを告げる極上のダンスパーティーナイト

ACCファンなら誰もが羨むスペシャルなライブ。これまで僕が見てきたACCライブの中で過去最高のライブだったことは間違いない。

ニューアルバム『AwesomeCity Tracks3』を引っ提げ、大阪から始まったAwesomeCityClubの2016年ワンマンツアー。名古屋、福岡と巡り、2016年7月8日(金)恵比寿リキッドルームにてツアーファイナルを迎えた。

お馴染みとなったThe Flaming Lipsの『Race For The Prize』が流れる中、ユキエ(Dr)を先頭にACCのメンバーが登場。3rdアルバムのスタートナンバー『Into the sound』からライブは幕を開けた。

いきなりACCから相当な意気込みを感じた。「今日のライブは踊りまくるぞ!踊らさせてやるぞ」という強いメッセージ。この曲を最初に持ってきたのはアルバムの最初のナンバーだからという意味が大きいのかもしれない。しかし、今日のライブに向けた意気込みを伝える意味においても、この曲を頭に持って行く必要があったのだと思う。

『Vampire』に続いてドロップされた『Children』では、ユキエを除く4人がステージ前へと並び、息の合ったアンサンブルを見せる。笑顔を振り撒きながら演奏する皆がとても楽しそうで、こちらも顔も思わずほころぶ。この感じがACCライブの醍醐味。胸躍らずにはいられない。

ライブ開始から4曲目にもう『It's So Fine』が来た。興奮と同時に「飛ばし過ぎじゃない?」と逆に心配になった。しかし、「そんな心配は無用」と言わんばかりで、右に左にステップを踏みながらリズムに乗せて音を奏でる4人。彼らのダンスに導かれるようにオーディエンスも一緒にステップを踏む。リズミカルに体を揺らし、AwesomeCityClubが放つ魅惑の世界にフロア全体が染まっていく。

お客さんの体も徐々に温まって来た所で、この季節にぴったりなサマーチューン『WAHAHA』が披露される。この曲の盛り上がりポイントはマツザカタクミ(B/Syn/Rap)とPORIN(Vo/Syn)のラップパートだ。これまでのライブではマツザカとPORINがクールに言葉を交わし合う姿が印象強く残っていたのだが、この日はいつにも増してエモーショナルなラップを見せた。軽快なビートに乗せて、ガチガチに力を入れたマツザカのパワフルなラップがこちらへ真正面から飛んでくる。熱い。格好良い。

 

この日のライブは、前半から5人の奏でるアンサンブルが素晴らしかった。もちろんatagi(Vo/Gt)とPORINの歌と、全体のコーラスワークも含めてだ。『Pray』ではアグレッシブでエッジの効いた演奏を披露。atagiの眼鏡が吹っ飛ぶくらいのアグレッシブさだ。(atagiのメガネが吹っ飛ぶかどうかがこの曲のバロメーターらしい)

もちろんチームワークの良さを見せるだけに留まらないのが彼らの魅力。モリシー(Gt/Syn)の血沸き肉躍るギターソロ(『Jungle』で魅せた2分近くに及ぶギタープレイはお見事だった)や、確かなリズムで刻まれるユキエの力強いドラミングに、マツザカタクミの大人の色気全開に繰り出されるベースライン。メンバーそれぞれが要所要所で見せ場を作り、観客を熱狂の渦へと巻きこむ。オーディエンスは彼らのハイレベルな演奏力に酔いしれるほかない。

その彼らのストロングポイントであるチームワークとハイレベルな表現力は、『Lesson』で最大限に発揮された。atagiのソロパートから始まるビバラロックでも見せた新しいアレンジは圧巻の一言。PORINとのうっとりするほど美しいハーモニーがフロアに響き渡り、一気に鳥肌が立った。ユキエとマツザカのリズム隊が生み出すグルーヴィーなサウンドが、僕らの体と心を揺らしていく。

盤石のサウンドを支えに、ダブルフロントマンが最高のハーモニーを解き放つ。ACC史上最高の『Lesson』を見た。

「これ今日全体のハイライトじゃん」と思ったら、『エンドロール』でさらに驚かされた。ここでもリズム隊のテクニックが輝きを魅せる。速すぎず、遅すぎない絶妙なBPM。そこにPORINの歌が加わり、なんともいえないノスタルジックな世界観が構築される。以前よりも遥かに声量がアップし、表現力も同じレベルで進化を遂げていたPORINの歌唱力。「別れの寂しさ」と「次へ向かう前向きな気持ち」という相反する感情が見事に表現されたこの歌を聴いて、僕は思わず泣きそうになった。

曲が終わると、atagiがPORINに「響いたよ」とお褒めの一言。うん。俺もすげえ響いたよ。

褒めただけでは終わらなかった。「エンドロールで帰るヤツ、マジ嫌だ」とエンドロールの歌詞に出てくる男性をディスり、PORINをいじるマツザカとatagi。会場に大きな笑いがこぼれる。みんなで「モリシー」と叫ぶくだりもそうだけど、観客を上手く盛り上げるMCが非常に印象的だった。この1年間でMC力もかなり進化した。以前のぎこちなさを考えれば、ホントスムーズになったと思う。しかも飾ってない。あるがままの姿で会話してるから、見てるだけですごく楽しい。

 

それにしても彼らが作る「別れ」にフューチャーした作品は名曲ばかりだ。『エンドロール』だけでなく、『僕らはここでお別れさ』やこの日披露された『Moonlight』などもそうだ。「寂しさ」や「切なさ」は感じながらも、 そこまで気持ちは暗くならない。むしろその過去を懐かしみ、ポジティブに未来を見据える感覚を覚える。だからといってバカみたいに前向きなわけでもない。このバランス感覚が絶妙で何度でも聴きたくなる。音楽のプロフェッショナルだからこそ成せる技である。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、ライブは終盤に差し掛かる。ここからの畳みかけは凄かった。まずは「『エンドロール』で魅せたならこっちはこの曲だ!」とPORINのお株を奪うべく、atagiが『Don't Think,Feel』で心の叫びを放ちオーディエンスを熱狂させる。ステージを降りて観客を煽るatagi。去年のライブを考えると、想像できないほどのエネルギッシュなパフォーマンスだ。まさにatagiの独壇場。彼の圧倒的な熱に押されてオーディエンスも「Don't Think!」「Feel it!」と無我夢中に叫び続ける。atagiそしてACCが観客の心を高揚させる。

「ACCのフロントマンはPORINだけのものじゃない!」と高らかに宣言するように、atagiはこのライブで『ネオンチェイサー』や『Moonlight』といった素晴らしい曲を次々に披露した。途中何度か声が裏返ってしまうシーンもあったが、フィジカルに訴えかけるatagiのライブパフォーマンスは素晴らしく、新しいステージへと成長を遂げる姿を見る事ができた。それにしても彼のファルセットはこの上なく美しい。出来ることなら永遠に聴いていたい。

 

ライブはまだまだ終わらない。『アウトサイダー』『涙の上海ナイト』とアゲアゲなキラーチューンを次々に投入。会場は大きな歓声に包まれ、お客さんのテンションも最高潮に達する。夏を始まりを告げる最高のダンスパーティーを思う存分に楽しむ。もうこれは楽しんだもん勝ちだ。楽しまなければ損だ。彼らの音楽を体いっぱいに浴び、体も心も無心で躍りまくる。「この時間が永遠に続けばいいのに」。そんなことを多くの人が思ったはずだ。

印象的だったのは、『涙の上海ナイト』でお馴染みとなったatagiとお客さんの「トン・ナン・シャー・ペイ」の掛け合いが始まる一連のシーンだ。いつもは徐々に互いの声が大きくなり、最後にPORINの「チン・トン・シャン・テン・トン」が来る。

と思ったら、この日は違った。PORINが放ったのはまさかの「愛してるよ東京」。

フロアのボルテージは一気に大爆発。凄すぎて、失神しそうになる。これにはやられた。たぶんほとんどの人がやられたと思う。すげえなPORIN。どんだけ人として魅力的なんだよ。

 

いよいよライブ本編は残り1曲に。atagiは最後の曲を前にこう述べた。「お客さんに元気を与えるつもりで、このツアーやって来たけど、逆にみんなからたくさんの元気をもらいました。今日これまでのツアーでもらった分を返してやろうと思ったけど、また元気をもらっちゃいました。だから最後にこの曲でお返ししたいと思います。」

ドロップされたのは『Lullaby for TOKYO CITY』。まさにこの場所に相応しい、そしてファイナルを飾るに相応しい珠玉の1曲だ。

天井には東京の街が映し出される(そのように見えたが、気のせいかも)。そしてスケールの大きな重厚なサウンド。ライブの終わりを感じさせる儚く切ないatagiとPORINの歌声。圧倒的な演出力と表現力でドラマティックな世界観を描出し、フロア全体を呑み込んでいく。

これまでのライブで最も長いパワフルでド迫力なアウトロ。僕は息を呑んでその光景を目に焼き付ける。一生忘れない。忘れたくない想いで、懸命にこの目に焼き付けた。霧の中で手を力強く上げるatagiのシルエットは、一生忘れることのない感動的な光景だった。めちゃくちゃカッコ良かった。

余談だが、自宅への帰り道に再び「Lullaby for TOKYO CITY」を聴いた。するとあの美しくもたくましい5人の光景が蘇えり、自然と熱いものが込み上げてきた。ACCファンなら、ぜひライブで一度は聞いてもらいたい大名曲です。

 

観客からの大きなアンコールに応えて、素晴らしいパフォーマンスを披露した5人が再び登場。演奏の前にatagiが一言。「みんなACC以外の音楽もたくさん聴くと思うんだけど、その中でも一番フェイバリットなアーティストになることを目指したい。頑張るよ」。力強い宣言だった。あるがままの気持ちだったと思う。ファンの中で一番好きなアーティストになったかどうかは分からない。比べるものでもないと思っている人も多いだろう。しかし、間違いなくこれだけは言える。

「この日ライブを観た人にとって、ACCは特別なバンドになった」と。

しかし、ここはゴールではない。『Around the World』で彼らは言う。<僕らはまだ旅の途中>だと。

そして、彼らは目指すのだ。更なる高みを。そう自信を持って宣言するように、アンコールの最後に『GOLD』を高らかに歌い上げ、ワンマンライブは興奮冷めやらぬまま幕を閉じた。記憶に残る最高のライブだった。ACCのメンバー自身も同じように感じているはずで、名残惜しそうにステージを去る5人の姿が非常に印象的だった。

 

メジャーデビューからわずか1年ちょっとで、彼らは凄まじい進化を遂げた。恐ろしいほどの進化スピードだ。その事実に驚きを隠せない。

スケールアップしたのは曲や演奏テクニックの強度だけではない。何よりもライブ力の成長が著しい。お客さんにハンドクラップを要求するなど、積極的にオーディエンスを引っ張るマツザカタクミやPORINの姿もそうだし、5人の体全体を活かしたダイナミックな演奏もそうだ。

演奏力だけでなく、フィジカルを活かしてお客さんのテンションを盛り上げていく。そういったエモーショナルなライブパフォーマンスは、1年前では見られなかった光景だ。お客さんの想像力を増幅させる照明などを含めて、ライブ演出でのクオリティはかなり高いレベルにある。

だから彼らのライブではみんな踊りまくるのだ。『Into The Sound』の言葉を借りるとするなら「心に身を任せて思うままに踊りまくった」。そう。踊るのは体だけでない。心も一緒に踊るのだ。これを実現させるのは非常に難しい。カッコ良くてイケてる音楽を鳴らすだけでは無理だ。曲のクオリティだけで実現できるものではない。真正面から全てをぶつけてこないと、そう簡単にオーディエンスの心を躍らすことはできない。

「理屈だけで音楽は鳴らせない」。そう強く感じた。音源しか聴いたことのない人が彼らのライブを観たら、「こんなにもエモいライブなのか!」とかなり驚かされると思う。こんなにも心を揺さぶるライブなのかと。それがACCのライブなのだ。もちろん演出やサウンドのクオリティも細部までこだわっているからこその凄さでもある。

 

とにかく素晴らしい一夜だった。「このワンマンツアーではお客さんからたくさんの元気をもらった」と話していたけれど、ファンから送られる彼らへの声援は、作品やライブでたくさん元気をもらったことへのお返しだったのだと思う。「こんな素晴らしい作品を作ってくれて、こんな素晴らしいライブをしてくれて本当にありがとう」。僕はそんな感謝の気持ちをAwesomeCityClubのメンバーに向けて精一杯送った。

あの夜は誰もが忘れない最高の瞬間だったと思う。ただ、彼らが目指す場所はこんな所ではない。

ファンにとってのナンバーワン、そしてファンにとってのオンリーワンを目指して、AwesomeCityClubはまだまだ終わることのない旅を続けていく。 

とりあえず俺も負けずに対抗心をメラメラと燃やして、自分のことを頑張ります。負けいないぞ!ACC!(お前誰やねん)

 

11月「Awesome Talks vol.05、vol.6」開催決定

アンコールでは新しい自主企画の開催が発表された。開催は11月。大阪と東京の2公演だ。ワンマンとは異なり、こちらは他のアーティストを招待し行われるライブです。「何だワンマンじゃないのか」と思っている人。侮るなかれ。

ACCの呼ぶゲストには外れがないのです!私もこの企画で素晴らしいアーティストに出会うことが出来ました。

「周りに好きな人いないし、ぼっちで行くのは心細いから行くのやめようかな。」、「ライブ行ったことから、色々不安が多くて行くかどうか迷ってる。」

迷ってるなら行きましょう。「Don't think,feel」です!

初めての方も、ぼっちの方も、みんな楽しめるのがAwsomeCityClubのライブです。なんせ私がいつもぼっちで見てるのですから。(笑)

おそらくこれからACCは、行かなかったことを後悔させるライブをし続けるでしょう。

迷ってるなら行くべきだと思う。もうそのライブは二度と戻ってこないのだから。

 

Awesome City ClubAwesome Talks -One Man Show 2016-」@恵比寿リキッドルーム セットリスト

1.Into The Sound

2.Vampire

3.Children

4.It's So Fine

5.WAHAHA

6.ネオンチェイサー

7.Jungle

8.Pray

9.4月のマーチ

10.Moonlight

11.Lesson

12.エンドロール

13.Don't Think,Feel

14.アウトサイダー

15.涙の上海ナイト

16.Lullaby for TOKYO CITY

アンコール

17.Around The World

18.GOLD

 

Awesome City Club過去のライブレポートはこちら

www.centerofongaku.com

 

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